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授業であるキーワードを知ってからというもの常々思っていたことがあるのですが、ペルソナ~トリニティ・ソウル~(以下トリニティ・ソウル)は原案となったペルソナ3を背景として作られ、そして読み解く性質のものではないのかということです。そのキーワードとは「間テクスト性(インターテクスチュアリティ)」、文芸批評の畑の用語ですね。

間テクスト性は、テクストの意味を他のテクストとの関連によって見つけ出すことである。……ある著者が先行テクストから借用したり変形したりすることや、ある読者がテクストを読み取る際に別のテクストを参照することをいう。

Wikipedia 間テクスト性
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%93%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E6%80%A7


本来ならWikipediaからの引用は避けたい所ですが、手元にある参考文献よりまとまっていたので引用しました。全てのテクストは先行テクスト(プレテクスト)の引用であり、そのモザイク・変形であるとされます。テクストとは、この場合は分析の対象となる作品のことを指します。

トリニティ・ソウルは、ペルソナ3を先行テクストとして、その引用、変形から成り立っており、また解釈する際にもペルソナ3を参照し、コードとして読み解くことが求められるものなのでは? ということで、ただ単にペルソナが出てくる話というわけではないということです。コードとは読みのベクトルを示す指標のことで、例えばペルソナ3はタロットにおける「愚者の旅」というコードから読み解くことが可能です。また、「ペルソナ」と聞いた時、原作ゲームを知っている人と知らない人では連想するものが違っているはずです。

クリステヴァによれば、ある作品を読むとき、そのテクストが帯びている「コード」が介在することや、フィルターがかかったりすることがあるため、作家から読者へ直接意味が伝えられるわけではないという。
ロラン・バルトが、芸術作品の意味は作品じたいにあるのではなく、鑑賞者の側にあるのだという考え方を述べているが、これも間テクスト的な見方を観点を変えていったものとされる。

間テクスト性とは (intertextuality) 用語解説
http://i.impressrd.jp/e/2008/02/29/389


そもそもペルソナ3の派生作品がある場合、作り手も受け手も先行テクストからの影響を受けることは自然なので、意識的に先行テクストを取り込み、間テクスト性を際立たせたオリジナル作品にしたのではないかと思います。ペルソナ3が「原作」ではなく「原案」だという言葉の意味はそこにあるのではないでしょうか(タイトルの答えを文章半ばで言ってしまった)。

ここから先はネタバレを含みます。

先行テクストの引用・変形の例として、今思い付くだけでも

・ペルソナ、無気力症(ペルソナ3のものと原理は異なる)、制御剤といった共通ワード
・高校生の学生生活
・都市伝説
・イゴールの存在(ベルベットルームもある設定)
・家庭に問題がある生徒たちの寮暮らし
・敵対する人工ペルソナ使いの勢力と、そこから主人公側の少年に接近する少女
・父のために自らを犠牲にする娘(髪も同じ赤色だったり)
・心を持ったアンドロイド(女性型なので正確にはガイノイド)
・桐条を連想させる巨大な財閥の存在
・ペルソナ3のアレンジBGMの借用(劇伴音楽としてではなく、作中でのBGMとして流れている)
・声優の選定

などなど。探せばもっとあるかと思います。さすがにこれだけあると偶然ではないですね。

もう少し個別に見ていきます。一例として、主人公・神郷慎の兄、神郷諒を、ペルソナ3の主人公をコードとして解釈することも可能かもしれません。諒は子供の頃に両親を目の前で亡くしており、普段はあまり自分の考えを言わず真意が測れないところがあります。これだけだと何のことはないのですが、諒の生死がぼかされたエンディングははっきりとペルソナ3からの影響が見て取れます。また、次回予告の詩の「少年の代わりにあなたは未来を得た」、これは「少年=諒」「あなた=慎」として解釈出来ると思うのですが、ペルソナ3でも主人公の代わりに他のメンバーが未来を得る展開になっています。ここからぼかされた諒の生死について推測することは、そんなに的外れでもないのでは。

当時から「実は天田説」があった戌井暢というキャラクターについて。P4U2に中学生の天田乾が登場ということで、また話題になっているかと思いますが(たぶん)、このキャラクターは現時点では天田ではないと言えます。これはペルソナ3を先行テクストとして解釈する人がいてこその説です。戌井は天田本人というよりは、「ペルソナ使いに囲まれた環境にいた」「犬を飼っている」「乾(けん)→いぬいとも読める」という要素から、「天田乾を彷彿とさせる」という位置付けのキャラクターなのだと思います。ペルソナ3のキャラクターデザイナー・副島さんも「スピンオフしているのは真田だけ(DVD7巻コメント)」と言っていますし。ちなみに真田がスピンオフしている理由ですが、ゲームとの関連性を出すにあたって、この作品に一番馴染む人物だったということです(電撃Girl's Style 2008年7月25日号)。ただ、無理矢理キャラ面で関連性を出さなくても良かったんでは、という気はします。

トリニティ・ソウルの世界では基本的に大人になるとペルソナが出せないことになっており、登場人物の1人、茅野めぐみによると、大人になると自分と向き合うことが出来なくなるから、だそうです。ただし作中での「ペルソナ」は「もう一人の自分」という意味であり、心理学用語における「ペルソナ(外的側面)」に向かい合うというよりは、その対となる「シャドウ」に向かい合うと言った方が近いかも知れません。これはシリーズ通してのテーマですね(むしろペルソナ3だけ例外で、このテーマがはっきりとは出てこない)。原案となったペルソナ3にも大人のペルソナ使いは登場せず、理論的には大人でも召喚可能だが、若者のほうが妥協が少ないため、より発現しやすいとしています(ペルソナ倶楽部P3)。発現の年齢制限は、この設定の延長線上にあるものではないでしょうか。大松プロデューサーによると、作品内の設定では、ペルソナは大人になると鈍化する類の思春期特有の感覚などとして位置付けられているそうです。制作的には、大人のペルソナ使いが出てくると収集がつかなくなるとのことですが……(DVD10巻 パーフェクトガイド ディレクターズカット版)。

原案はペルソナ3ではあるものの、所々にそれ以前のシリーズを思わせる箇所があったり、全体的な雰囲気はペルソナ3以前に寄っています。私は異聞録は序盤で止まっているので、言及できるのが罪罰のみになってしまうのですが、(多少変形されていますが)世話を焼きたがる兄とそれが鬱陶しい弟というモチーフは罪罰を思わせます。声も子安だし。またトリニティ・ソウル第1話の冒頭の歌「Der Mond zeigt mir meine eigne Gestalt」は、歌詞がハイネのドッペルゲンガーから取られていますが(原語のドイツ語版)、ペルソナ2罪のオープニングにも同じくハイネのドッペルゲンガーが引用されており(こちらは日本語訳)、恐らくこれが元ネタでしょう。月が照らしたのは苦悩する自分自身だった、という詩です。

Heinrich Heine "Der Doppelgänger"

Still ist die Nacht, es ruhen die Gassen,
In diesem Hause wohnte mein Schatz;
Sie hat schon längst die Stadt verlassen,
Doch steht noch das Haus auf demselben Platz.

Da steht auch ein Mensch und starrt in die Höhe,
Und ringt die Hände, vor Schmerzensgewalt;
Mir graust es, wenn ich sein Antlitz sehe -
Der Mond zeigt mir meine eigne Gestalt.

Du Doppelgänger! du bleicher Geselle!
Was äffst du nach mein Liebesleid,
Das mich gequält auf dieser Stelle,
So manche Nacht, in alter Zeit?


ハイネ『ドッペルゲンガー』
訳:遠山一行

静けき夜 巷は眠る
この家に 我が恋人は かつて
住み居たりし
彼の人はこの街すでに去りませど
そが家はいまもここに残りたり
一人の男 そこに立ち 
高きを見やり
手は大いなる苦悩と闘うと見ゆ
その姿見て 我が心おののきたり
月影の照らすは 
我が 己の姿
汝 我が分身よ 青ざめし男よ
などて 汝 去りし日の
幾夜をここに 悩み過せし
わが悩み まねびかえすや


そういうわけで、トリニティ・ソウルは構造的にも「原案」としてのペルソナ3あっての作品だと思います。10年後の世界で、所々原案を彷彿とさせる設定の話があったら? という視点で楽しむのも楽しいのではないんでしょうか。

※ついでに言うと、文芸批評を専門に学んだわけではないので、間違ってる所などありましたらツッコミお待ちしてます。
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